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News3 大学序列に大きな変化の可能性=スーパーグローバル大学

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国際教養大学(秋田)や立命館アジア太平洋大学(大分)など、外国人留学生と寮に暮らしながら異文化や語学、ものの考え方や対応力を身に付けていく教育の在り方が大手企業に評価され、就職率は100%に近い実績となっています。今回は、そんな大学がこれからの日本のトップ大学になるかも知れないという記事を紹介します。

 

スーパーグローバル大学 争奪てん末記  サンデー毎日 10月19日号より

 

supergloval_list海外進出や英語公用語化の荒波は大学にも及ぶ。文部科学省は9月26日、「世界ランキングトップ100を目指す力のある大学」など「スーパーグローバル大学」(SGU)に37大学を選んだ。一方、涙をのんだ名門校も。水面下で繰り広げられた争奪戦は─。

東大や早稲田大、慶應義塾大は国内ではエリート校に違いないが、英教育専門誌『タイムズ・ハイヤー・エデュケーション』が10月1日に発表したランキングでは影が薄い(左の表)。国内大学の文系分野で「世界トップ100」に入るのは東大の社会科学分野だけ、文学など人文科学分野はゼロだ。一方、理系は東大と京大だけが「トップ100」レベルにある。

早大ファイナンス総合研究所の野口悠紀雄顧問は、米スタンフォード大で客員教授を務めた後、2005年に早大大学院に着任してこんな経験をした。

「学生に英語の授業を提案したら猛反発されました。ファイナンスだけでなく、歴史学や文学も含め一流の論文は皆、英語なのに理解されません。高等教育を英語以外の自国語で完結できた国はソ連、中国と日本だけです」

著名ランキングで全米トップ30位に入るビジネススクール(経営学大学院)の米国人准教授は、こんな話をする。

「日本のビジネススクールから誘われても転職を検討する気はありません。トップ50位以下の大学では、経歴に傷がつくからです」

 

一方、中国、香港、シンガポールでは、無名のビジネススクールが急速にランクアップしている。

「研究に専念できる環境を整備し、米国の著名教授に50万ドル(約5400万円)以上の年俸を提示して獲得しているのです。実力者が増えるに従い、ランクは上がります。日本の大学の動きは全く耳にしません」

そんな風当たりを感じてか、文科省は4月、国内大学の国際競争力を高めるため、一部の大学の「徹底した国際化」を重点支援する「スーパーグローバル創成支援」に乗り出した。「世界ランキングトップ100を目指す力のある大学」(タイプA)に16校、「社会のグローバル化を牽引する大学」(タイプB)に93校が具体的な構想を申請した。タイプAには10年間に42億円、タイプBには同17億円を上限に補助金を支給する。「スーパーグローバル大学」に選定された計37校は右の表の通りだ。文科省幹部が説明する。

 

「少子高齢化で国の財政が厳しくなる中、国公私立を問わず、意欲のある大学には補助金を出して応援しますが、そうではないところまで面倒は見られません。“護送船団方式”の時代は終わりました」

文科省はこれまでも「国際化拠点整備事業」「グローバル人材育成推進事業」を手掛けてきた。SGUの選定は、大学グローバル化の総仕上げともいえる。高等教育専門誌『カレッジマネジメント』の小林浩編集長は、日本人の英語力に与える影響をこう見通す。

「小学校でも英語の授業が必修化され、語学教育はスカイプなどの活用で激変し、企業の間では英語を公用語にする動きが広がっています。大学はSGUの開始で大きく変わります。文科省はSGUの構想通りに進捗するか随時チェックするはずで、結果的に日本人の語学力は確実にアップするでしょう」

では、SGUの顔ぶれを追ってみよう。タイプAには旧帝国大学や早慶など国内トップ校が勢ぞろいした。タイプBは、千葉大など総合大学、東京外国語大など英語力が高い学生が集まる大学、長岡技術科学大など理系大学からなる。

審査には、教育関係者やグローバル企業の幹部などで構成する約50人の委員が携わった。申請書に目を通した文科省関係者は言う。

「“絵に描いた餅”的な構想が多い中、現実味があり、時代に合う構想を申請した大学が選ばれました。国立大の方が多いのは、国の交付金カットが続き私立大より危機感が強く、中身が濃かったためでしょう」

大学通信の安田賢治常務は受験生の動向に一定の影響があると予想する。

「理系大学は国際的なイメージが加わり、志願者が増えると思います。具体的には長岡技科大、豊橋技術科学大、理系私大で唯一選ばれた芝浦工業大です」

芝浦工大は大胆な数値目標を掲げる。13年と23年の比較で、在学生に占める留学生比率は1・5%から29・4%へ、留学経験のある学生比率は1・7%から100%へ、外国語授業の比率を3・4%から46・4%へ高めるという。実現すれば早慶や上智大を上回る。

「卒業生には工場の立ち上げ要員としてアジアに赴任する者が多く、エンジニア用の英語習得や異文化で生活する体験が重要と考えています。以前からマレーシアやブラジルから学生の受け入れに力を入れており、その点も評価されたのでは」(芝浦工大の杉山修グローバル教育推進課長)

 

前出の安田氏は、大きく変わる可能性がある大学をもう一校挙げる。

「東洋大です。“日東駒専”で唯一のSGU選定は志願者や偏差値を引き上げる効果があると思います」

同大は学生ベンチャーの起業を促す「グローバルイノベーション学部(仮称)」を19年に新設する予定だ。同大の高橋清隆・学長室長は「元通産次官の福川伸次理事長の持論、『課題解決先進国の実現』を念頭に少人数チームでアイデアを出し、理事会の賛同を得てまとめました。まだ、内容は各学部には伝えていません」と、トップダウンで進めたことで野心的な構想を立案できた様子を明かす。

タイプBのうち、立命館大と立命館アジア太平洋大(APU)は同一法人、明治大は別法人の国際大を13年に系列化した。いわば“ダブル採択”だ。立命館大の幹部職員は言う。

「APUは国際系大学としての人材養成、立命館大は理工系人材の養成、と違うモデルで構想を練ったのが奏功しました。立命館大は中国やマレーシアの大学との連携など先行事例が評価されたと思います」

明大の勝悦子副学長は具体策を説明する。

「5年間で明大の学士と国際大の修士が取得できるコースを予定しています。いずれの教育も全て英語です。また、留学生と日本人学生が混住する宿舎を改修か新築します」

SGUは今後10年間、補助金を活用して施設整備や人件費に充てる。期間終了後はどうなるのか。国際基督教大の日比谷潤子学長は、こう話す。

「この事業は、採択された構想を着実に実行して、初めて意味があるものになります。補助金の支給は10年間ですが、その後も継続していくことが肝要です」

また、慶大の清家篤塾長は言う。

「卒業生や企業などからの外部資金を導入して数百億円規模の基金を設け、その運用益で賄いたい。これから10年は基金の蓄積を目指すつもりです」

◇国内外の大学併願が当たり前に!?

さて、SGUのリストに見当たらない名門校にお気付きだろうか。採択されなかった一橋大、神戸大、青山学院大、中央大、同志社大、関西大などだ。各校はグローバル化を今後も進める姿勢で一致するが、それ以外は「謙虚に受け止め、理由を分析する」(一橋大)、「今後、十分な分析を行う。受験生の大学選択には関係すると思う」(中大)と言葉少な。同志社大の山田史郎副学長は苦しい胸の内を明らかにした。

 

「学内や卒業生から『関西における私立大のポジショニングに影響するのでは』などと非常に厳しい指摘を受けています。今まで留学生の受け入れや送り出しの数量拡大などで日本の大学の先頭に立ってきたと自負し、今回は量から質の展開を訴えたつもりです。しかし、他大に比べて数量的拡大が物足りなかったかもしれないと感じています」

ある神戸大関係者は、こんな話をする。

「大学職員から『苦戦している』と噂は聞いていましたが、ショックです。OBや先輩からは『一体どうなっているんだ』という声が上がっています。志願者が減る可能性もあると思う」

また、中大関係者からは「立命館大や明大に比べ、意思決定が遅い。国際寮などの取り組みは評価されているだけに残念」といった嘆きも聞かれた。

さて、SGUは入試改革にも取り組むなど、多岐にわたる改革が求められている。TOEFLのほか各種外部試験や国際バカロレアの活用、課外活動を含めた多面的な評価などだ。ベネッセコーポレーションの海外進学責任者である藤井雅徳氏は、こう予想する。

「入試がボーダーレス化し、国内外の大学を併願する受験生が確実に増えるでしょう。SGUには、それほどのインパクトがあると感じています」

今回の採択は、日本の“大学序列”が崩れ、日本の教育を大変化させるインパクトもありそうだ。

ジャーナリスト・谷道健太  本誌・中根正義/柳澤一男

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