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News22 AIの苦手な読解 中高生も? 昨年度8校調査、生活経験の不足原因か<毎日新聞>

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 人口知能(AI)やロボットの産業分野への活用が進んでいます。”給料も休暇も要らない”AIに対して、人はAIが苦手とする分野でしか生き残れないだろうと危惧されています。しかし現実は、毎日新聞(2016.7.26)が報じるように、甘くはないようです。お子さんにしっかりとした読解力を身に付けることが、保護者や教育者にとって緊急の課題ではないでしょうか。

AIの苦手な読解 中高生も? 昨年度8校調査、生活経験の不足原因か

将来、人工知能(AI)と仕事を分け合う可能性のある子供たちの世代に必要な基礎的な能力は何か――。東大入試に挑戦するAI「東ロボくん」を開発中の国立情報学研究所・新井紀子教授(数学)が、中高生を対象に実施中の調査で、人間がAIより得意とされる読解力が「驚くほど低い」という結果が明らかになりつつある。昨年度、調査に協力した埼玉県戸田市は、結果を踏まえ、読解力工場プロジェクトを始めた。調査結果と同市の取り組みを紹介する。

●開発過程で判明

mainiti_it 「この問題に答えられないんだ……」。調査に使う問題の一部を作った戸田市の小学校教諭3人は、問題を見てつぶやいた。3人は「教え子が読めていないと思うことがよくある」と口をそろえる。「てをには」がわからないのか、主語を読み違えたり、文章の中に書かれていることを答えられなかったりするという。

調査は、AIに入試問題を解かせるため、人が文章を読む時の過程を分析した新井教授が、「子供たちは読めているのか」という疑問を抱いたことから始まった。AIは問題を解けても、文章を正しく理解したり、具体例を挙げたりすることは苦手だ。新井教授は将来、労働者に求められるのはAIの不得意分野になるはずだとして、初見の文章の意味を素早く理解する力を調べ始めた。

生徒らはなぜ読めないのか。3人のうちの1人、市立美女木小の水沼美和教諭は、理科の授業で6年生に「息を吐いた時、袋の内側に入っていくものは」と尋ねた時、「内側って何?」と聞き返した児童が何人もいたことを思い出し、「生活経験が不足していて、語彙が少ないことと関係があるかもしれない」と話した。市立戸田東小の飯島亜美教諭は「大事な点を一言にまとめるように言うと、『全部写してはだめ?』と聞く子がいる。ポイントを探す訓練をより丁寧にした方がいい」と振り返った。

昨年度の調査は、東京都と埼玉県の公立中高校8校で行われ、約1200人が解答。戸田市は市立中6校の2、3年から各校1クラスずつ計340人が参加。問題文は教科書の文章から複数セット作成し、その中から生徒が1セットを選んだ。

●係り受け構造理解できず

知識を問うのではなく、人が文章を読解するときのプロセスを10項目に分け、係り受け(語句や文節の修飾の関係)や、主語と述語、接続詞からなる文章構造などを理解しているかを問うものであるため、解答は文中にある。教科書を使うのは、中高生が初めて読んで分かることが想定された文章だからだ。

1問ごとの解答者数が少なく、統計的に意味がある結果が出るのはまだ先だが、新井教授の現在の分析によると、公立中では約2割が、係り受け構造の理解を問う問題を「ほとんど解けない可能性がある」。

調査に協力した東京書籍は「読めている前提で教科書を作ってきたのでショックだ」と驚く。これまで文章の難易度や生徒の理解度を調べたことはないが、「読解力は教科を超えた基礎的な力だ」として調査を進め。次期学習指導要領向けの教科書を作り始める2018年度には、もっと詳細なデータを得たいという。

●戸田市 指導法研究へ

戸田市の戸ヶ崎勤教育長は「これまで、教員は、子供たちが読めていないと実感するだけだったが、それが可視化された」と話し、「このままでは、戸田の子供たちは将来、AIと共存できない。『読む力』を、教員が意識して指導していく必要がある」と強調。小中学校全校で今年の調査に参加し、全国に先駆けて読解力の差が、いつ、どのような要因で生じるのか、データに基づいて分析。読む力をつけるための指導法を研究していく。県の学力調査結果との関連も調べる予定だ。

市教委は6月、市内全校の好調を対象に研修会を開き、調査について説明。参加者から「入学後すぐに調べれば、個別に対応できる」「教員も一緒に受ければ、指導に生かせそうだ」と積極的な声が上がっていた。

新井教授が開発する東ロボくんは、検索や統計処理の技術を駆使し、15年度の大学入学模試の5教科合計点で全国平均を大きく上回った。新井教授は、これまでの結果から「AIと同じ誤答の導き方をする子供がいる」と仮説を立て、「国語教育に問題があると考えられる。読む力が身についていないと認識して、指導法を検討すべきだ」と訴えている。

【岡礼子】 2016.7.26 毎日新聞朝刊 “デジタルで学ぼう”

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