考える力は生きる力 考え抜く頭脳を育てたい

どんぐり・スマイル12


dsmile0012「絵をかくことで育つ力 ~想像力と共感力 その2」

自分を主張する力は、幼児期初期にまず急速に発達し、その後はなだらかに発達していきます。それに比べて、ガマンする力の発達は、一般に幼児期から児童期の初期にかけて、ゆっくりと発達していきます。つまり、幼児期は、どちらかというと、ガマンよりは自分の思いを主張しがちで、児童期中期までには、ガマンと主張の力がある程度、育ってくるということです。

東京学芸大学教授・岩立京子先生の言葉より

 

先日、あるコーチングの先生から、こんな話を伺いました。

「教育現場でコーチングの研修を行うと、次のような現場の風景が浮かびあがってきました」

「まず、最近の生徒の多くは、昔のように先生の話に素直に従うということをしない。そのため、何とか言う事を聞かせようと、より高圧的に出て、生徒を震え上がらせている先生がいる。一方で、とにかく「優しく」接することで状況を改善しようと試みるものの、生徒を全くコントロールできず、無力感に陥っている先生がいる」

「このどちらかの極に多くの先生が偏っていて、状況に応じて生徒と効果的なコミュニケーションを交わせる人が少ないようです」

このお話を伺って、私は、これは学校の教師だけではなく、今子育て中の親御さんにも、何かと共通する点があるように感じました。

最近では、若いカウンセラーの先生に多いようですが、「とにかく子どもは、自由にのびのび育てましょう」「ストレスをかけてはいけません」というスタンスに立ち、子どもが何か問題行動をとっても、親御さんには、ひたすら「傾聴」することをすすめている場合もあります。

しかし、これを極端に解釈して、「子どもにストレスをかけてはいけない」と親御さんが何も言わずにいる間に、子どもがダガが外れたかのようにふるまい、親御さんは、どうしていいのか分からず途方に暮れる、ということも、決して珍しくはないように感じます。

たとえば、前回のコラムにもかきましたが、「機嫌が良くないと、お友達をたたいてしまう」というお子さんに対して、「ストレスが強いのでしょう。思いっきり好きなことをして、遊ばせてください。それに、お家では、絶対にしからないでください」と指導する学校の先生やカウンセラーがいます。

しかし、これまでにゼロ歳から中学生までの、ありとあらゆる年齢、性格のお子さんを見てきた私の経験からいうと、この「ストレス悪玉説」で解決する場合もありましたが、そうでない場合も数多くあります。

そのうち治るだろう、と周囲の大人が静観している間に、さらに暴力がひどくなるかもしれません。そして、10歳ぐらいになると身体も大きくなり、暴れ出すと手に負えない、という最悪の状況に陥ることもあります。

強迫神経症ぎみの親御さんから、家で厳しい「しつけ」を受けていた、いわゆる「いい子症候群」が、思春期になってお子さんの問題行動として出てくるのは、私もその通りだと感じます。

しかし、だからと言って、「子どもは絶対に叱ってはいけない」ということではないのです。

 

「叱る」という言葉で思い浮かべるイメージが様々なので、混乱を招くこともありますが、「公共の場で騒ぐ」「人のものをとる」「人のものを壊す」「人を傷つける」「お店の商品に勝手に触る」「約束を破る」などの「社会性」や「道徳」に関することは、「それはダメだ」ときっぱり教えなければなりません。

「社会的知性」の発達の遅れは、思春期以降、子どもが広く社会と関わり、アイデンティティを築こうとする段階で、コミュニケーションや対人面でのトラブルなど、大きな問題となることがあります。

では、どうすれば良いのでしょうか。
実は「ガマンする力」や「感情をコントロールする力」は、幼児の時からの日々の練習によって、向上することが分かっています。

そして、失敗を繰り返しながらでも、辛抱強くし練習をしなければ、「すぐにキレるなどの、衝動的な行動」を抱えたままの状態で成長し、「ガマンが出来ずに、仕事をすぐにやめてしまう。職を転々とする」「気に入らないことがあると、周囲にあたり散らす」「攻撃的で、誰に対しても喧嘩ばかりふっかける」といった、いわゆる社会適応が難しい大人になる可能性も、決して低くはありません。

多くの親御さんは、「子どもを、有名大学に入れることが大事」「子どもの将来は、資格や英検をとれば、大丈夫」と考えておられるかもしれません。

しかし、実は学校を卒業して社会に一歩出れば、職場には様々な人間関係が存在します。厳しい先輩や、高圧的な態度でいじわるをする取引先など、相手によって言葉使いを変えたり、その場の雰囲気を察してうまく対応したり、時には「怒りをぐっとこらえたり」ということが、非常に大事になってきます。

私が子育て中の親御さんに、声を大にして言いたいことは、「子どもは、かわいい、かわいい!だけで育ててはいけない」「まず、ガマンができる、感情のコントロールが出来る人間に育てることが、子どもの将来を考えたうえで、一番大切」であるということです。

私がいつも、参考にさせて頂いているある行動療法の先生は、「手のかからない子どもなんて、いないんです」「親が手をかけずに、放っておいて、子どもが社会適応できるようになることは、ありません」(親が、過保護でも過干渉でもいけない)とまで、断言されていますが、本当にその通りかもしれません。

実は、同じ年齢でも、多数のお子さんを同時にみていると分かってくるのですが、お子さん一人一人の、「ガマンする力」は、もともと「生まれつき」異なるようです。(ここから先は、親御さんにとっては、ちょっとショックな話になるかもしれません)

発達心理学では、子どもの気質を「活動性」と「情動のコントロール性」の二つの軸から分析しています。

たとえば「活動性」が高いほど「活発」で、低いほど「おとなしい」。さらに、「情動のコントロール性」が高いほど「ガマン強い」、そして低いほど「癇癪もち」で「感情のおもむくままに行動してしまいがち」という傾向があります。

情動のコントロール性が高く、活動性が高いお子さんは「がんばりや」。
情動のコントロール性が低く、活動性が高いお子さんは「乱暴な」など。

このように、いわゆる「ほめ言葉」に使われる気質と、「困ったものだ」という意味合いで使われる気質は、「情動のコントロール性」の高低によって、分かれてくるようです。

「うちの子は、どのタイプになるのかしら」ちょっと時間を作って、考えてみるのも良いかもしれません。

実は、子育て全般期を通して親御さんの頭を悩ませやすいのが、「情動コントロールの苦手な子」との関わり方なのです。

私自身、小さいお子さんを見て、「何でこんなに、一人一人違うんだろう」と悩んだことがあるのですが、「情動コントロールの苦手なお子さん」は、すぐにかんしゃくをおこしたり、自分の主張を曲げなかったりするので、「育てにくい」と親御さんが困っておられる場合も、決して少なくはないようです。

しかし、何があっても、ひたすら内にためこむ、表面だけは従ってみせるというのではなく、「しっかり自己主張できる」というのは、逆にいうと長所でもあります。ただ、その表現と、感情のコントロールについては、日々しっかり学んでいく必要があると思います。

たとえば、3歳ぐらいまでのお子さんであれば、男女問わず、お友達にかみついたり、たたいたり、つきとばしたりすることは、日常的によくあります。「うちの子は、変なのでしょうか」と、親御さんは死ぬほど心配されますが、思いが強くても、それを自分で調整する力がまだ弱いので、ある程度は「仕方がない」と割り切ることが必要です。

しかし、「何か嫌なことがあったら、相手にあたってスッキリ」という行動が、習慣化しないよう、親御さんは、子どもが2、3歳の小さいうちに、身体をはってでも、「それはダメです」と、教えなければなりません。

実は、小学生になって、「子供がお友達をたたくのが、なおらない」と悩まれている親御さんは、よくお話をうかがってみると、「小さい頃からママをたたいていたが、あまり痛くないので、ママはガマンしていた・・・・」という場合があるのです。

しかし、こういう親の姿勢は良くありません。子どもが4歳になる頃までならば、親御さんは子どもを、圧倒的な体力差をいかして、反省にもっていくことができます。

具体的にどうすればいいかと言うと、子どもがママをたたきそうになったら、「はがいじめにして」止めなくてはいけません。手をおさえつけ「ごめんなさい」を言うまで、絶対に手を離さないぐらいの気迫と覚悟が必要です。

もちろん、一回ですぐになおる、ということは考えにくいですが、子どもには8歳ぐらいまでに、「人をたたく、つきとばすなど、絶対にやってはいけないこと」「必要に応じてガマンすること」「感情をコントロールすること」を、徹底的に教えるべきだと私は考えています。

(次回に続く)

         2011/05/23掲載

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