考える力は生きる力 考え抜く頭脳を育てたい

コラム<7>


2008/9/4

 

<『答えのない時代』における教育の役割とは(その1)>

 

9月1日の辞任会見で、福田首相が発した「あなたとは違うんです」が、ネット上で流行しているようです。

もうすでに「あなたとは違うんです」Tシャツまで発売され、売れているというから、本当に驚きですね。

 

このように、知識資本主義社会においては、知識や情報そのものが生産物としての価値を持ちます。

これまでの常識から言えば、生産性とは、「労働生産性」のことでした。つまり、何時間働いて、どれだけの生産物を作ったか、が計られてきたのです。

 

しかし、現在注目を集め、重要視されるようになっているのは、労働生産性よりもむしろ「情報生産性」なのです。これは、実は「何時間働いたか」などという時間で計ることはできません。

 

ある人が3分で思いついたことのほうが、30時間かかって他の人が考えたことよりも、価値があり、「あなたとは違うんです」Tシャツを作って売っている会社のほうが、誰もが知っている有名企業よりも格段に利益率が高いということさえ不思議なことではないのです。

 

このところ企業の倒産が急増しています。帝国データバンク発表による2008年上半期の倒産集計では、国内の負債額1000万以上の倒産件数は、半年間で6022件。前年同期比で、11.6%も増加しています。

 

この秋以降は、より大型の倒産が発生するとの予測もあり、大企業ですら危うい状況にあります。

大変厳しいことですが、時代の変化にあった営業方法を取り入れたり、時代のニーズに合致した商品やサービスをすばやく開発することができない企業は、大企業でも生き残ることが難しくなってきています。

 

このように21世紀は、世界的にみても厳しい淘汰にさらされた変化の激しい時代です。経済のボーダレス化とグローバル化がすすみ、人口が10億人以上の中国やインドが爆発的に成長してきた今日、企業も個人も「今後、この社会はどうなっていくのか」という不安は確信になりつつあります。

 

特に、現在子育て中のお父さん、お母さんは、「高校や大学を卒業しても、正社員になることも結構難しい今日、いったい子供をどんなふうに育てればいいのか」頭を抱えておられるかもしれません。

 

「学校もあてにならない。子供の生きる力ををつけるのは、親しかない」と考えている方も多いのではないでしょうか。

 

しかし、何も悲観的に考える必要はありません。これからの社会がどうなっていくのか、日本と世界の動きをしっかりと見つめ、合理的に判断し、勇気をもって行動していけば、いくらでも道は開けます。

 

知識資本主義社会とは、個人や小さな組織でも、アイディアと実力さえあれば、十分大企業と互角にたたかえる、とても面白い時代なのです。

 

何よりも、子育て中のお父さん、お母さんに知っていただきたいことは、これからの時代は、「これまでの常識や価値観が通用しない、『答えがない時代』である」ということです。

 

たとえば、多くのお父さん、お母さんはお子様に「医者や弁護士になってほしい」、「公務員が一番いい」とすすめておられるかもしれません。しかし、自治体でも倒産するというこの時代に、「この仕事であれば大丈夫」という保証は、何もないのです。

 

むしろ、「これからの時代、確実なものは何もない」という前提のもと、では子供たちが社会に出る10年後、20年後の日本の社会は、いったいどうなっているのかを、きちんと見据えることが親の義務であると思います。

 

(次回に続く)

 

 

2008/9/22

 

<『答えのない時代』における教育の役割とは(その2)>

 

先日、オンラインメンバーのお母さまから、次のようなメールをいただきました。

 

「小学校1年生から、どんぐりをしています。最初は、泣いたり怒ったり大変でしたが、親も子も我慢。少しずつ自分で考えることができるようになり、小学校3年生の今は、5年生の問題まで解けるようになりました」

 

「自主学習として学校にもっていくと、いい勉強をしているね、と先生にも驚かれました。ほめられたことで、ますます先生が好きになり、どんぐりも好きになったようです」

 

また塾には行っていないのに、進学塾の主催するオープンテストでは、県でも有数の、とてもよい成績をおさめておられるとのことです。

 

実は、このお母さまからのメールをみても、私(カニ先生)は、あまり驚きませんでした。

 

私たち、どんぐり教育研究会のファックス添削会員のお子様の中には、どんぐりの良質の算数の文章題を続けることにより、勉強が楽しくなり、その結果として塾や学校での成績が劇的にあがったお子様が、相当数おられるからです。

 

「どんぐりを1年ほど続けて進学塾の模試をうけてみたら、一番上のクラスに入れます、と言われました。びっくりです」

 

「大変難しい私立小学校の編入試験に、合格しました。わずかな期間しか準備していないのに、どんぐりはすごいですね」

 

このように書くと、多くの親御さんは、「そのお子様は、毎日ものすごーくたくさん問題を解いているのではないの?本当に週に1問か、2問で、そんなに勉強ができるようになるの?」と疑問に思われるかもしれません。

 

しかし、みなさん本当に、毎日何問も取り組んでおられるわけでは、ないのです。

 

週に2問以上されているお子様もおられますが、あくまでも本人のペースで、無理をせずに取り組まれています。しかも、国語や算数のいろいろなドリルをしているわけでなく、あくまでも「どんぐりの文章題だけ」なのに、「国語の成績もあがっている」のです。

 

毎日漢字のかきとりや、読解のドリルをしているのに、国語が苦手なお子様にとっては、「ずるーい」と叫びたくなるような話かもしれません。

 

私(カニ先生)の持論の一つに、「勉強のできる子は、机の上で勉強している時間が短い」というものがあります。

 

実は、塾講師の間ではよく、「できる子は、何をしなくても、何を教えなくても、勝手にできるようになる」ということが言われます。みなさんの周囲にもいませんか?「友達と遊んだり、サッカーや野球のスポーツをがんばっているのに、勉強もすごくできる」という、不思議なお子様が・・・

 

私はそういう子供たちを観察した結果、次のようなことがわかりました。それは、このお子様たちは「机に向かっていない時間でも、いつも自分の頭を使って、常に試行錯誤を繰り返し、いろいろなことを考えている。だから勉強も自分なりに工夫して行い、結果として何でもできるのではないか」ということです。

 

ではこのような「常に自分の頭で考え、工夫するお子様」は、特別なのでしょうか。世間でいうところの「天才くん」なのでしょうか。

 

実は、どのお子様も、どんぐりに正しく取り組めば、「天才」になることが可能です。お子様が、「自分で勝手に何でも工夫して進めていく」ようになれば、親御さんたちはとても楽になりますよね。

 

私はそれを「進化スイッチが入る」というふうに、表現しています。

 

次回は、どんぐりを通して、お子様の「進化スイッチをおす」方法について、述べてみたいと思います。

 

(次回に続く)

 

 

2008/10/2

 

<答えのない時代における教育の役割とは(その3)>

 

前回のコラムを読まれたオンラインメンバーのお母さまから、次のようなメールをいただきました。

 

「何でも速いことが要求されるこの時代、それとは逆に、ゆっくりがいい、という、どんぐり方式に興味を持ちました。まずは、親がじっくり勉強してみたいと思います」

 

このメールを読んで、私(カニ先生)は、以前教えていたお教室で、幼児から小学校低学年の子供たちのお母さまたちと、次のような会話を日々繰り返していたことを思い出しました。

 

(4歳児のお母さま)「先生、うちの子は幼稚園で、お片づけがいつも遅いんです。どうすれば、速くできるようになるのでしょう」

 

(小学校1年生のお母さま)「先生、うちの子は計算が遅いんです。どうすれば、速くできるようになるのでしょう」

 

(小学校2年生のお母さま)「先生、うちの子は、掛け算を覚えるのが遅いんです。どうすれば・・・・・・」

 

実際にお母さまたちは、レッスン中の幼児のお子様にも、「速く取り組みをしなさい」、「速く片づけをしなさい」と、何度も声をかけていらっしゃいました。

 

今の小学校では、「速く計算ができること」、「速く九九を言えるようになること」、ついでに「速くお掃除や授業の準備ができること」が、すばらしい!とされています。

 

ですから、「うちの子が学校でつまずかないように」と思われているお母さまにとっては、「速く!と言っては、いけませんよ」というどんぐり理論は、最初のうちは「???」なものに見えるのかもしれません。

 

しかし、私(カニ先生)がいろいろと調べたところによると、「計算が速くできなければいけない」、「何でも速いほうがいい」というのは、どうも「日本独自」の考え方であるようです。歴史を振り返ってみると、偉大な業績を残した学者は、暗記や計算が苦手で、小さいころは、むしろ「のろま」が多いのです。

 

相対性理論で有名なアインシュタインは、計算がすごく遅く、落ちこぼれ扱いを受けていました。また、エジソンは小学校にあがると「何故?どうして?」を繰り返したため、学校をやめさせられました。その後、好きな実験に没頭し、発明家として大成功をおさめたのですが、「若い人は、決して時計をみてはいけない」という言葉を残しています。

 

日本における数学教育の第一人者であり、多くの著書をもつ東京理科大学教授の芳沢光雄先生は、その著書「ぼくも算数が苦手だった」(講談社現代新書)の中で、

 

「計算が速くなると頭はよくなる、という日本固有の迷信を、一刻も早く過去のものにしないと、OECDの国際学力調査(PISA)で、日本の成績はますます下がっていくでしょう」と、書かれています。

 

先生自身、中学にあがるまでは、「計算は遅いうえにミスばかりする算数のできない子供だった」そうで、とても説得力があります。

 

ぜひとも小学校の先生たちには、芳沢先生の本を読んでいただきたいですね。

 

前回のコラムで私は、「どんぐりを通して子供が成長するのは、進化のスイッチが入るからです」と、書きました。では、進化のスイッチとは何なのでしょうか。

 

「時計を見てはいけない」というエジソンの言葉、天才たちの子供時代のエピソードなどを参考に、是非みなさんも考えてみてください。

 

(次回に続く)

 

 

2008/10/15

 

<答えのない時代における 教育の役割とは(その4)>

 

前回のコラムで、「どんぐりに取り組まれると、お子様が成長するのは、進化のスイッチが入るからです」と書きました。それを読まれたお母さまから、先日次のようなメールをいただきました。

 

どんぐりのことは、前から知っていましたが、あまりにも型破りな学習法で、信じることができませんでした。今、子供が小学校高学年になり、やっと気がつきました。これから少しずつ、はじめていきたいと思います」

 

私(カニ先生)は、以前東京で第一回の学習相談会を開催したときにも、同じようなことを、複数の参加者の方からうかがいました。ですから、「ラジカル」とか「型破り」とか言われても、もうあまり驚きません。

 

確かに、どんぐりの良質の算数の文章題には、フンコロガシやかたつむり・宇宙人がどんどん出てくるので、「変わってるなー」と思われるかもしれません。(私も最初は、そう思いました)

 

しかし、どんぐり問題の真髄である「文章題を自分の頭でイメージし、絵図をかいて考える」というのは、実は型破りでもなんでもなく、ごくごく正統派の学習法だ、ということを、みなさんはご存知でしょうか。

 

筑波大学付属小学校教諭で、全国算数授業研究会の理事でもある、田中博史先生(教育番組 かんじる算数123など、テレビ出演も多数)は、その著書「わくわく算数忍者 絵にかけば算数はできちゃうのだの巻」(文渓堂)の中で、「問題文をよむときは、お話の場面を想像しながら読んでね。文章題は、まず絵にかいてね」と繰り返し、例をあげて説明をされています。

 

また指導経験の長い、地域の個別指導の塾にも「とにかく絵をかくように」と指導をされるところは、たくさんあります。

 

ですから、市販のドリル(最初から絵がかいてあるもの)と比較して、「うちの子は小学生だから、時間をかけて絵をかいている暇はないですよ」と、そう思われているお母さまがもしおられるとしたら、是非一度学習法を見直されてみてください。

 

最近では、教育関係者の間では、「勉強のできる子は、よく手を動かしてかいている」、「絵をたくさんかく子は、頭がよくなる」ということが、公然の秘密として言われています。

 

有名中学合格者の自宅を徹底調査してまとめられた「頭のよい子が育つ家」(四十万 晴著 ・日経BP社)の中にも、「できる子の自宅には、ホワイトボードがあり、子供はいつもそこに何かかいている」との報告がありました。

 

また、お絵かきを知育としてとらえた良書「頭のよい子は絵がうまい」(山田 雅夫著 ・日経BP社)によれば、絵をかくとは、「対象をよく見ること」、「感じること、考えること」、「コミュニケーション」、「楽しむこと、創造すること」など、知育に大切な要件がつまっている、ということが指摘されています。

 

このように見てくると、糸山先生の提唱されるどんぐり方式は、「ラジカルでも型破りでもなく」よく考えられた、無理・無駄のない正統派の学習法である、ということが言えるのではないでしょうか。

 

実際、私(カニ先生)が、これまでみてきた多くの子供たちの中でも、「できる子は、とにかくよく手を動かして、絵図をかいていた」ということが断言できます。

 

そういうお子様は、本を読んでも、その内容をありありとイメージ化して味わうことができますし、小学校の教科書など、一度読めば大体のことは分かってしまうようです。

 

ですから、「机について勉強している時間は短くても、なぜか勉強ができる」のですね。

 

実は、糸山先生のいわれる「どんぐりの背比べ」の時期に、たくさんどんぐり問題でお絵かきをしておくと、誰でもこのような力をみにつけることができるのです。

 

「意識して、対象をよく見る」「イメージして、絵図をかく」ことが自然になると、子供は勝手に進化していきますので、保護者の負担は、ぐっと減ります。「ドリルをしなさい」「いやだ!」という親子ゲンカもなくなります。

 

では、「どんぐりを通して進化のスイッチが入るのは、絵をかくようになるから」なのでしょうか。いいえ、それだけではないのです。次回は、さらにどんぐり問題の中にある、秘密の仕組みについて、考えてみたいと思います。

 

(次回に続く)

 

 

2008/11/04

 

<答えのない時代における教育の役割とは(その5)>

 

先日、ある雑誌の、子育てに関する質問に対し専門家が答えるコーナーで、次のような記事を見つけました。私たちにも、同じような内容のご質問が多く寄せられていますので、ここにご紹介させていただきます。

 

「進学で苦労させたくないと思い、小学校に入学する前から子供の勉強を見てきました。でも、小学校3年生になった今、すっかり勉強嫌いになって、わからないとすぐに投げ出し、全く自分で考えようとしません。勉強をはじめても集中できず、大好きなお絵かきばかりに熱中しています。どうしたらよろしいでしょうか?」

 

このようなご質問は、最近とても多いのです。幼稚園にあがるころから、ドリルや習い事を頑張ってきて、お子様が消化不良をおこしてしまっているのですね。

 

親御さんは「もう小学校3年生なのに、このままではいけない」と不安になり、あれやこれや「させようとする」。それに対し、また子供が抵抗する、という状況だと思いますが、どこのご家庭でも、似たような悩みなのかもしれません。

 

実は、こういう状況でどんぐりをスタートしても、あまりうまくはいきません。というより、どの教材を使っても、何を勉強しても、親御さんが望まれるような効果(勉強が好きになる、じっくり考えるようになるなど)は期待できないものです。

 

多くの親御さんは、「子供に何をさせるか」(Do)に目が向いています。

しかし、本当に重要なことは、子供に何をさせるかではなく、「親が子供に対して、どのように接しているか」、「子供の情緒が安定しているか」という(Be)の部分なのです。

 

たとえば、大ベストセラーとなった水野敬也さんの「夢をかなえるゾウ」(飛鳥新社刊)の中に、成功するための最初の課題として、「靴をみがく」というものがあります。

 

この「靴みがき」は、古今東西の多くの成功哲学の本の中に同じことが書かれていますので、「やってますよー」という方もおられるかもしれません。

 

しかしこの「靴みがき」一つとっても、重要なことは、「一週間に何回みがくか」とか「どんなブラシを使うか」(Doの部分)ではなく、「どんな気持ちでみがいているか」にあるのです。「面倒だな」、「こんなの早く終わらせちゃおう」と思いながら、適当にぱっぱとすませていては、何百回繰り返しても、あまり意味がありません。

 

本当は、靴を磨きながら、「お世話になっている人や存在に感謝すること」「目の前の小さなことに集中すること」「物やお金を大切にすること」など、いろいろなことを考え、そこから様々な気づきがうまれ、そして自分のあり方(Be)が変わっていくことが、重要なのですね。

 

実は、子供の教育にも同じことがいえるのです。

 

親御さんたちは、「何をどのくらい勉強させるか」よりも「24時間、どのように子供と接しているか」に、気をつけてみてください。

 

糸山先生がよく言われているように、「強い刺激」、「速さ」は、子供の「拒否・不安・恐怖」を誘発し、成長に悪影響を及ぼします。

 

「速くしなさい」と毎日繰り返し、子供に言っていませんか?

「どうして、そんなことばかりするの」と子供をしかってばかりいませんか?

 

大人もそうですが、「速さ」を強要されたり、不安を抱えている状況では、「自主的に物事に取り組んだり」「いろいろなことを、前向きに楽しく工夫したり」できないものです。

 

どんぐり方式では、「リセット」という言葉が頻繁に登場します。この「リセット」の意味が、よくわからないです、というご質問も多くいただきます。

 

実は「リセット期間」をおく、ということは、これまで子供に「不安」や「拒否」を与えていたものを取り除き、新しく快適な状況(Be)をつくりなおすために、とても重要なことなのです。

 

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