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【特集】アクティブラーニングが学校を変える

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fuzoku_syo<1>アクティブラーニング指定校の授業を参観して

2016年6月2日(木)と、6月3日(金)に、「福岡教育大学附属福岡小学校・授業づくりセミナー2016・子供が輝く授業力アップのヒントが満載の2日間!なるほど!アクティブ・ラーニングのこたえがここにある!」を参観してきました。

1日目は、6年生のクラスの「算数」の授業を見学。

2日目は、同じ6年生のクラスの「総合的な学習」の授業を見学させていただきました。

算数の授業も「めあて」と「まとめ」がしっかり板書され、今回の授業で何がポイントなのかがお子さん自身で復習できるように工夫されています。

「今○○君が、それは“真逆(まぎゃく)”といいましたが、みんな真逆って意味分かりますか?」

「今の○○君の意見に、質問がある人いませんか?」

「今○○君がこう言いましたが、それは“等分”ということですね」

など、生徒の発言をしっかりひろって、言葉の理解力を高めていく先生の声かけは、大変参考になりました。

 

<2>構造的なノートを取り入れた授業が学びを変える

さらに、私が驚いたのは2日目の「総合的な学習」での生徒さんたちのノートの使い方です。

6年生の「総合的な学習」では、「広げよう、世界遺産の魅力」というテーマで、複数回にわたって授業が組み立てられています。

今回の授業は、「修学旅行で行った京都・奈良の経験をふまえて、世界遺産の魅力についてみんなで話し合おう」というテーマで行われました。

授業が始まる前に先生が、「どうぞ生徒たちのノートをご覧ください」とすすめてくださり、生徒さんたちのノートを見る時間がありました。

私が驚いたのは、この“ノートの使い方”です。

生徒さんたちのノートは、A4ノートを見開き一杯使って、

「ページの上1/4スペースの左側半分に“見出し・テーマ”を書く」

「縦の線を2本引いて、ノートの下段スペースを“縦に3分割”する」

「一番左に“事実・調べたこと”を書く。真ん中に“解釈・気付き・考えたこと”を書く。一番右に、“行動(これからやっていきたいこと)・要約、浮かんだ疑問など”を書く」

「最後に、ページの上1/4スペース右側半分に“まとめ・3ポイント”を書く」

というスタイルで統一され、どの子も丁寧にイラストをまじえながら、工夫したノート作りが行われていました。

(実はこのノートの使い方は、“黄金の3分割”と呼ばれ、高い思考力が要求されるマッキンゼーなどの経営コンサルタントや、東大合格生の多くが積極的に取り入れている方法です)

福岡教育大学附属小学校では、構造的なノートスタイルに基づいて記録され、一人一人が「探求型学習」を継続的に深めていけるように工夫されています。

東京都内のある中学校でも、同じようなノート指導が行われていると聞いたことがありますので、これからだんだんと全国的に広がっていくものと思われます。

当日、ある生徒さんの書いたノートを参考にして、当会でサンプル的なノートを作ってみました。

<世界遺産をテーマとしたノート>

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<修学旅行で知った「日本の歴史」をテーマとしたノート

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<3>郷土にある世界遺産を学ぶ

このノートを使いながら、今回の授業は次のように進んでいきました。

まず、はじめに「京都奈良の世界遺産には、どんな魅力があるか」についてグループで話し合い、その後様々な意見を一人一人が発表します。

(どれも日本風だ、中国との交流の遺物だ、長い歴史と伝統を知ることができる、人々の思いや願いを知ることができる…などが次々に発表されました)

出てきた意見を先生が板書し、「今出された意見の中で、何と何がつながるか考えてください」と、問いを発します。すると、驚くほど生徒さんたちから活発な意見交換がなされました。

次に先生が、福岡県では「福岡城、太宰府天満宮、八幡製鉄所、沖ノ島、三池港、水源地ポンプ室」などいくつも写真を見せながら、sekaiisan

「この中に3つ世界遺産があります。どれだと思いますか。グループで話し合ってください」と、問いを発しました。

恥ずかしながら、私自身はもうこの時点で「水源地ポンプ室…なにそれ?」と思考停止になりかけていました。

しかし子供たちは、あれこれと活発に議論をかわし、ついにあるグループが、「福岡の世界遺産登録は、どれもが“明治日本の産業革命遺産”である」という見解にたどりつきました。

 

<4>学びは、生徒たちの疑問から始まる

今回、附属小学校の公開授業を見学させていただいた中でも、先生が、

「何か、え?と疑問に思ったことはありませんか?」と問いかけた時に、すぐに「○○について、疑問をもちました」と答える生徒さんグループと、「疑問なんて何もありません…」という顔で、じっと黙っている生徒さんグループにはっきり分かれていました。

一方では、先生に何をきかれても、一回も手をあげることができないお子さんもいらっしゃいました。

同じ附属小学校の同じクラスの中でも、「自分で考える力」「オリジナルの問いをたてる力」には、生徒さん一人一人に開きがあるように感じられてなりません。

 

<5>アクティブラーニングの課題

「アクティブ・ラーニング」は、最近では教育系の記事では必ず取り上げられる旬のキーワードです。

しかしながら、「本当にうまくいくの?」「一部の上位校でしか成り立たないでしょう?」「また形だけの教育改革になるのでは?」といった懐疑的な意見も、小・中・高校とあらゆる現場の先生から出されており、親御さんたちも「一体どうなるの?」と不安に思われているかもしれません。

そもそも、「アクティブ・ラーニングとは何か」「何故いまこの時期に?」ということについては、「すぐわかる!できる!アクティブ・ラーニング」(西川純・学陽書房)という本に、次のように書かれています。

「アクティブ・ラーニングとは、教員による一方的な講義形式の教育とは異なり、学習者の能動的な参加をとりいれた教授・学習法の総称です」

「大学教育と役割分担することで、初等中等教育で育てる能力として言及されている内容は、以下の通りです」

1.知識を活用して複雑な事象を理解し、答のない問題に解を見出していく批判的、合理的な思考力をはじめとする認知的能力

2.人間としての自らの責務を果たし、他者に配慮しながらチームワークを発揮して、社会的責任を担いうる、倫理的・社会的能力 など

 

これらは、これからの時代を生きる子どもたちが、大人として生活する数十年後の世界を生きるために必要な能力だと私も思います。

では“具体的にどうするか”ということですが、私たち大人は、小・中・高校の「一斉授業」のイメージが強いので、「何をどうすればアクティブ・ラーニングになるのか」いまいちピンと来ない方が多いと思います。

今回訪問した「アクティブ・ラーニング指定校」である、福岡教育大学附属小学校の今回の授業(6年生の総合学習)では、次のように進められていきました。

1.教師から今日の課題を伝える。

2.前回の授業で残った課題について、家で考えてきた自分の意見を、小グループで共有する。グループ内で意見をまとめるのに、書き込んだ“付箋”(ポスト・イット)をメモとして、ノートにはっていく。

3.「それでは、発表してください」の先生の声かけの後は、順不同でどんどん生徒が手をあげて発表する。

4.自分の後に誰に発表してもらうかは、生徒自身が考えて、「○○さん、お願いします」と指名する。(これはちょっとびっくりでしました!)

5.誰かの意見に質問があるときは、「○○さんに質問があります」、同じ意見のときは、「○○さんに付け加えます」といって、生徒同士が考えを広げ学びあっていく。

先生は、時々「それは何故ですか?理由を言ってくださいね」などの声かけをする時のほかは、ほとんど口を開きません。(ある意味で、小学校の先生というより、企業研修や大学生のキャリア教育でいうところの、ファシリテーター(進行役)的な感じがしました)

<7>進化し続ける教育

今回の授業は、「世界遺産の魅力について、みんなで話し合おう」というテーマでしたが、

生徒さんたちの前向きな姿勢と、お互いにフォローしあいながら「グループ学習と発表」の繰り返しで進められる授業に、キラキラとしたエネルギーを感じました。

特に、「次に発表する人を、生徒自身が指名する」というのはすごいなと思いました。少なくとも、眠くなるような一方的な授業ではないことは確かです。

西川純先生は、「アクティブ・ラーニングは、子どもに考えさせ、任せることが多くなる分、指示や指導がいらなくなる」ということも言われています。これから全国的にどのように行われていくのかまだ分かりませんが、良い方向にいけばいいなと思っています。

<8>最後に

2020年に予定されている大学入試改革をきっかけとして、教育は今変わろうとしています。ここで勘違いしてはならないのは、大学入試が変わるから教育が変わるのではなく、私たちの働き方が変わるからそれに応じて教育が変わる、だから入試も変わるという点です。

働き方が変わるとは、次のように言われています。

1.技術の革新が、経済の構造(会社を運営するための社員数を減らすことが容易になった)や教育や授業のしくみ(タブレット端末を使って、トップクラスの人気のある先生の授業がいつでも好きな場所で受けられるようになった)にまでも影響を与え始めている。

2.労働そのものが、非正規社員(パート・アルバイト)や外部委託に移行し、そして外国人労働者へ。ついには人間からITや自動運転やロボットにとって代わられようとしている。

3.その結果、高い賃金や安定した生活を欲しようとするならば、ロボットが到底まねのできない「満足度の高い専門技術分野(医療・資産運用コンサルタントなど)」や「高度な接客分野(福祉・ホテルのフロント業務など)」、あるいは「創作分野(文学・芸術・歌・ダンス・司会者など)」などを目指すしかない。

そういう社会が到来する(もう既に、かなりそうなっている)ことを考えれば、「知識」だけではなく、「思考力・判断力・表現力」「主体性・多様性・協調性」といった能力が、評価すべき対象として追加せざるを得ない背景があります。

そういった意味で、「自分の頭で考えられる力」が身に付くのは、毎日の体験・生活習慣だと思います。

グローバルに事業を展開してきた酒井穣先生(株式会社BOLBOP代表)は、その著書「ビジネスパーソンの父が子どもたちに伝えたい21世紀の生き方」(ディスカバー)の中で、次のようなフィンランドの高校卒業認定試験の内容を取り上げ、「本物の学力とは何か」を論じておられます。

フィンランドでは、高校卒業認定試験として、「工業化の進展に伴って、子供とその生活環境がどのように変化していったかについて論ぜよ」(歴史と公民)

「スカンジナビア半島が永久凍土でおおわれている事実について説明せよ」(地理)などの問題が出題されます。

これは相対的な競争ではなく、子供の絶対的な学力を評価するための試験です。これに合格できなければ高校を卒業できませんが、この試験の結果が一定水準であれば誰でも大学に入学することができるそうです。

酒井先生は、このレベルの学力は日本の一般的な学校教育では身に付かないのではないか、ということを危惧しておられます。

また、酒井先生は同時に同じ本の中で、

「西暦○○年にどこで何が起こったか、たくさん暗記している子供を育成する時代は終わった」

「今後は、そもそも鎌倉幕府とはなんであり、なぜ必要とされたのか。鎌倉幕府は、どう発展し、どう衰退し、崩壊したのか。そこから現代の日本の政治はどのような影響を受けているのか」

「そういったことに興味を持ち続け、日々つみあがっていく研究成果を追いかけることができる子供を育てなければならない」

「これができなければ、きびしい時代の波に翻弄されるばかりの子供を生み出してしまう」と主張されています。私もこれらは非常に重要な視点であると思います。

2016.7.9掲示

※『明治日本の産業革命遺産』について興味のある方は、こちらからどうぞ。

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